BL45XU-PXの運用について(その2)

 現在、研究技術開発室ではBL45XUの運用法についての見直しを行っております。

 大変急ではございますが、新運用法を採用するにあたって、今サイクル(2/15-3/7)の期間、下記新ルールに基づく運用をテスト的に行うことといたしました。

 新運用ルールは

  1. ID1のGAPは18.8mm固定とする(ピーク波長0.90A)。
    PXユーザーの変更できるGAPはID2のみであり、ID1のGAP変更を行なわないよう十分に注意する。
  2. ID2のGAPの範囲10mmから17mm(ピーク波長範囲0.95Aから1.5A)内の波長変更は随時行える。
    ID2のGAPを10mm以下や17mm以上に変更しないよう、十分に注意すること。
  3. 上記範囲外(GAP1とGAP2を同一の値にすることも含む)へのGAP変更は入射時および小角散乱ユーザーが実験していない場合以外は認めない。

 となります。

 ただし、GAP変更を行う場合には1時間以上前に必ず小角散乱ユーザーに連絡を取っていただけますようお願いいたします。今回の運用はテスト運用ですので、小角散乱ハッチ側でもGAP変更に伴う強度およびビーム位置等が測定データに及ぼす影響を調査するためのテストを行います。GAP変更前後のなるべく近接した条件でのデータを(一般ユーザーが)収集する予定です。従いましてリファレンスデータの収集の準備のためのお時間をいただけますようよろしくお願いいたします。

 これまでBL45XUでの実験を行う上で波長変更のプロセスには下記のような制限がございました。(1月23日付けrikenbl-all発)

  1. ID1のGAPは15.8mm固定とする(ピーク波長 1.02A)。
  2. PXユーザーの変更できるGAPはID2のみ
  3. 原則として、ビーム入射時(一日一回入射時は10:00、一日二回
  4. 入射時は10:00と22:00)以外のGAP変更は不可。
  5. 例外規定(小角散乱ユーザーの実験タイプによるGAP変更ルールの例外)
    1. 小角散乱ハッチユーザーとの事前協議によってそれ以外の時間もGAPの変更可能
    2.   
    3. 原則に従い、入射時以外のGAP変更不可
    4.   
    5. 22:00以降のGAP変更は任意(22:00以前は変更不可)
    6.   
    7. 夜間のGAP変更は任意。ただし、変更が可能となる時間は未定

 BL45XU-PXはMAD法によるデータ収集に特化されたビームラインであるにもかかわらず、上記のような制限が存在することは本ビームラインを利用するユーザーにとって不利益が多いと判断しました。また、小角散乱ユーザーにとっても実験中のGAP変更は実験データの質の低下や実験そのもののやり直しを誘発する場合があります。

 本運用ルールの変更はID2のGAPを変更したときに小角散乱側の利用している波長のX線に与える影響をなるべく少なくするよう計画されたものです。 BL45XU−PXは、光源にタンデムアンジュレータを採用し、二つのアンジュレータから発生する波長の異なるX線をトリクロメーターによって取り出して利用することによって3波長のX線が同時に利用できるようになっています。同時に小角散乱実験にも利用しております。小角散乱ハッチでは基本的にID1からのX線を利用した固定波長での実験となっております。

 これまでのID1のGAPを15.8mmとし、これを基本GAPとして使用する方法ですと、ID2のGAPをSe, Hg, Au, Ptといった比較的利用頻度の高い原子種の吸収端近傍の波長をピークとするようなX線を出せるように動かしたとき、ID2から小角側の利用している1.02AのX線も(少しですが)出てきます。そのため、ID2のGAP変更を行うと小角側の実験に支障が出ます。

 そこで、タンパク結晶構造解析でよく利用されている原子種の吸収端付近にID2のGAPを持っていってもID1からのX線と干渉しないようなID1のGAP値とID2の駆動範囲の検討を行いました。さらに、小角側のモノクロメーターの設計限界とを勘案してID1から0.90AのX線をがでるようなGAP値とすればよいとの結論に達しました。

 新ルールへの変更に伴って、吸収端波長から見積もると、Se, As, Ge, Ga, Zn, Cu, Ni, Er, Tm, Yb, Lu, Hf, Ta, W, Re, Os, Ir, Pt, Au, Hg, Tlの各原子種を用いたMAD測定は複数の原子種にまたがって実験が可能となります。これ以外の原子種(Br,Pb,Co等)、および二つのGAPをそろえた測定(使用波長0.90A)からのGAP(=測定波長、測定原子種)変更は上記新運用ルールの2.の条件の下でなければ行えないこととなりますが、現在の利用状況から上記運用形態の方がユーザーの皆様にとってより有益であると判断しました。

 また、基本波長を変更したためもあり、X線強度にも影響が出ました。
 GAP1のみ15.7mmにしたときのサンプル位置での1.02Aのflux(0.1mmx0.1mm)約8E+10 Photons/secでしたが、現在、GAP1のみ18.8mmにしたときのサンプル位置での0.9Aのfluxは約4E+10 Photons/secと約半分になります。

 すでに立案しておられる実験計画等に支障が出る場合もあるかと思いますがなにとぞご協力よろしくお願いいたします。

 ご意見、ご質問等ございましたら、BL45XU-PX担当 研究技術開発室 河野までご連絡ください。また、利用された結果やご感想などもお寄せいただけますようよろしくお願いいたします。

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河野能顕 KAWANO,Yoshiaki, Ph.D.
理化学研究所 播磨研究所 研究技術開発室
〒 679-5143 兵庫県佐用郡三日月町光都 1-1-1

Tel : +81-791-58-2839
: +81-791-58-0802 (ex.3333)
Fax : +81-791-58-2834
e-mail : ykawano@spring8.or.jp
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