RIKEN Beamlines at SPring-8

BL44B2 理研物質科学ビームライン

概要

 BL44B2は、高エネルギー粉末回折法を利用した物質科学ビームラインです。主な研究分野は、新奇機能性物質の物性発現機構を電子密度分布をもとに解明する精密構造物性の研究です。そのために、高い統計精度かつ高い角度分解能の粉末回折データが短時間で得られるよう、光学系の最適化、回折計の設計がされています。
 SPring-8の標準的な偏向電磁石から発生した白色放射光は、光学ハッチ内で単色化及び集光され、実験ハッチ内にある粉末回折計上の試料に照射されます。その回折X線を透過配置のカメラ法により一度で測定することにより、わずか数mgの粉末試料から高い統計精度のデータが短時間で得られます。

光学ハッチ

 シリコン 111の二結晶分光器により単色化されたX線は、白金コートされたシリコンのベントシリンドリカルミラーによって、高次光の低減、鉛直方向及び水平方向の集光を行うことが可能です。実験ハッチで得られるビームサイズは、粉末試料を封入するガラスキャピラリーの形状に合わせて、鉛直方向が0.2mm、水平方向が3mm程度に最適化されています。利用可能なエネルギー範囲は12.4keVから33.5keVです。特に、高エネルギーを利用することにより、重い元素を含んだ物質においても、吸収補正の必要のない高い信頼性のデータを得ることが可能です。試料位置でのフォトンフラックスは、水平方向の集光により約1011 photons/secに達します。

Energy range12.4~33.5 keV
Energy resolutionΔE/E~10-4
Photon flux~1011 photons/sec
Beam size0.2 mm (V)×3.0 mm (H)

実験ハッチ

 二次元検出器イメージングプレート(IP)を備えたカメラ半径286.48mmのデバイシェラーカメラが設置されています。IPの手前に10mmのスリットを設置しIPを動かすことにより、1枚のIPに最大20データを記録することが可能です。そのデータは、実験ハッチの外にあるリーダーにより、2θで75度までを0.01度間隔で読み出されます。また、窒素ガス吹き付け型の装置により、試料の温度を大気中で容易に約90Kから1000Kまで制御することが可能です。


図1.理研物質科学ビームラインの光学レイアウト


※ お問い合わせ ※
〒679-5148 兵庫県佐用郡佐用町光都1-1-1
国立研究開発法人 理化学研究所 放射光科学研究センター
E-mail address: rikenblsc@spring8.or.jp