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BL45XU 理研構造生物学ビームラインⅠ

概要

 理研構造生物学ビームラインⅠ BL45XUは垂直アンジュレーター2基を光源として、ダイヤモンド結晶にて分岐・分光されたX線をX線小角散乱(Small-angle X-ray scattering、SAXS)とタンパク質結晶構造解析(Protein Crystallography、PX)の2つの実験ハッチに同時に供給することができるユニークなビームラインである。SAXSとは1から数100 nmの粒子または電子密度の不均一領界によって生ずる散漫な散乱から、粒子サイズや形状、集合状態に関する構造情報を得ることができる手法である。SAXS実験ステーションでは溶液中のタンパク質複合体の低分解能構造解析や生物から材料までの幅広いナノスケールの構造・機能相関解析の時分割実験などが行われており、sub-nmから数100 nmの広い構造スケールの規則・不規則構造の解析を行っている。


Fig. 1 BL45XUの光学系配置図

 SAXS実験ステーションの特徴は、直射光の周り(いわゆる「小角領域」)に観測される弱い散乱を測定するための理想的な光学系を備えていることである(Fig. 1)。光学系はアンジュレーター光を合成ダイヤモンドを分光結晶とした2結晶分光器にて単色化し、Kirkpatrick-Baez配置の水平・垂直平行化ミラーにより寄生散乱を抑えるように工夫されている。集光点は光源から57.5 m、縮小率は2.48 : 1である。両ミラーは 表面にRhコートが施されており、計算では4 mrad の入射角および 12 keV のエネルギーにおいて 82% の反射率がある。また、寄生散乱を低減するために、4つの真空4象限スリットを備えている。試料で散乱された微弱なX線を精度良く測定するために光源−試料間と同様に試料−検出器間も真空にする必要がある。試料−検出器間距離は必要な小角分解能に応じて100、600、900、2300、3300 mmのいずれかに変更することができるように設計されている。ビームラインのスペックをTable 1に示す。

Table 1 BL45XUのスペック

利用エネルギー領域 6.7 - 14 keV
エネルギー分解能 ~10-4
フラックス 2 x 1011 ph/s @12.4 keV
ビームサイズ
[マイクロビーム・モード]
150 μm (V) x 5250 μm (H)
[2 μm (V) x 8 μm (H)]
測定可能qレンジ
[小角分解能]
q = 0.0025 - 1.7 A-1
[d = 4 - 2500 A]

 試料位置には700 mm (V) x 1000 mm (H)の定盤があり、精密XZステージにより試料位置を制御することができる。
 検出器として、小角用にはDectris社製PILATUS3X 2M、またはX線イメージインテンシファイヤーと背面照射型CMOSセンサーを組み合わせたΦ165mmX線検出器、広角用には広角測定用フラットパネルセンサー、の3種類がある。それぞれの検出器の特長を生かすように適宜切り替えて使用している。
 また、微小領域解析を行うためにFresnel Zone Plate(FZP)を利用したマイクロビーム実験も行われている。空間的に非一様な系や繊維1本などの微小試料に対して威力を発揮している。

応用例

 BL45XUで行われている主な研究テーマは、キーワードとして、「溶液散乱」「ナノ構造」「時分割」などを含んでいる。主な研究テーマを列挙すると次のようになる(カッコ内はキーワード)。

・タンパク質の折り畳み機構の解明(時分割、溶液散乱)
・タンパク質複合体の低分解能構造解析(溶液散乱)
・生分解性プラスチックの構造科学研究(小角・広角同時測定、時分割、空間分割、ナノ構造)
・モデル生体膜の構造研究(広q測定、微量測定)
・異常小角による埋もれた界面・ナノ構造体解析(埋もれた表面・界面構造、ナノ構造)
・タンパク質集合体の高次構造や凝集体形成過程に関する研究(溶液散乱、ナノ構造)

 生体関連物質から無機材料にわたって幅広い試料が扱われている。また、通常の透過配置での小角散乱測定のみならず、表面・界面の構造情報を得るための反射配置(GI-SAXSとも呼ばれる)での測定も行われている。

参考文献

ビームラインFujisawa et al., J. Appl. Cryst. 33, 797-800 (2000).


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